「障害福祉サービスを始めたいけど、どの法人格を選べばいいの?」とお悩みの方、いらっしゃいませんか?
社会福祉法人・NPO法人・株式会社のどれで運営するかは、できる事業の範囲・税制・補助金・ガバナンスに大きく影響します。今回は社会福祉法人を中心に、3つの法人格の特徴をわかりやすく整理します。
社会福祉法人とは?
社会福祉法人とは、社会福祉事業を行うことを目的として設立された非営利法人です。根拠法は社会福祉法で、同法第22条に「社会福祉法人とは、社会福祉事業を行うことを目的として、この法律の定めるところにより設立された法人をいう」と定義されています。
設立には所轄庁(都道府県知事または市町村長)の認可が必要で、設立後も所轄庁による指導監査を受けます(社会福祉法第56条)。非営利性・公益性が厳格に求められる代わりに、税制上の優遇措置や補助金の対象となるのが大きな特徴です。
社会福祉事業の種類:第一種と第二種
社会福祉法では、社会福祉事業を第一種と第二種に分けています(社会福祉法第2条)。
第一種社会福祉事業(同法第2条第2項)は、特別養護老人ホームや障害者支援施設など、利用者の生活への影響が大きい入所系サービスが中心です。原則として社会福祉法人または国・地方公共団体しか経営できません。 株式会社やNPO法人は原則として第一種を運営することができない点は、障害福祉分野の事業者にとって重要なポイントです。
第二種社会福祉事業(同法第2条第3項)は、居宅介護・就労継続支援・グループホームなど、入所系以外の通所・訪問・共同生活系のサービスが中心です。これらのサービスについては、社会福祉法人に限らずNPO法人や株式会社も指定を受けて運営できます。
NPO法人・株式会社との比較
NPO法人(特定非営利活動法人)
NPO法人は、特定非営利活動促進法に基づく非営利法人です。社会福祉以外の幅広い分野の活動を目的として設立でき、設立の要件は社会福祉法人より緩やかです(社員10名以上・10種類の書類提出など)。
非営利の法人ですが、社会福祉法人ほどの公益性は求められないため、第二種社会福祉事業の指定は受けられても、第一種は原則として運営できません。また、社会福祉法人と比べると税制優遇・補助金の対象範囲が狭い点に留意が必要です。
株式会社
株式会社は、会社法に基づく法人であり、営利法人である点が社会福祉法人・NPO法人との大きな違いです。障害福祉サービスの第二種については指定を取得して運営することが可能ですが、第一種社会福祉事業は原則として経営できません(社会福祉法第60条)。
利益を株主へ配当できる一方、法人税が通常通り課税され、社会福祉法人向けの固定資産税非課税等の税制優遇は受けられません。
3法人の主な違い:一覧表
| 比較項目 | 社会福祉法人 | NPO法人 | 株式会社 |
|---|---|---|---|
| 根拠法 | 社会福祉法 | 特定非営利活動促進法 | 会社法 |
| 営利/非営利 | 非営利 | 非営利 | 営利 |
| 設立手続き | 所轄庁の認可 | 所轄庁の認証 | 登記のみ |
| 第一種社会福祉事業 | ✅ 経営可 | ❌ 原則不可 | ❌ 原則不可 |
| 第二種社会福祉事業 | ✅ 経営可 | ✅ 経営可 | ✅ 経営可 |
| 法人税 | 収益事業以外は非課税 | 収益事業以外は非課税 | 通常課税 |
| 固定資産税 | 社会福祉事業用は非課税 | 原則課税 | 原則課税 |
| 補助金・整備費 | 対象になりやすい | 限定的 | 原則対象外 |
| 指導監査 | 所轄庁が定期的に実施 | 所轄庁が必要に応じて実施 | 原則なし(指定更新時のみ) |
※上記は概要です。個別の補助金・加算については要件を別途確認してください。

社会福祉法人を選ぶメリット・デメリット
メリット
- 第一種社会福祉事業を経営できる ― 障害者支援施設(入所サービス)の設置・運営が可能
- 税制優遇が手厚い ― 法人税・固定資産税・不動産取得税等が社会福祉事業部分について非課税または軽減(社会福祉法第62条等)
- 補助金・整備費の対象になりやすい ― 施設整備費補助等の対象として位置づけられることが多い
- 社会的信頼度が高い ― 行政・地域からの信頼を得やすく、連携事業や受託事業に有利
デメリット
- 設立要件が厳しい ― 基本財産の確保(土地・建物等)や評議員・理事の要件を満たす必要がある
- ガバナンス規制が厳格 ― 2017年の社会福祉法改正以降、評議員会・理事会・監事・会計監査の体制整備が義務付けられた
- 所轄庁の監査を受ける ― 定期的な指導監査(法第56条)があり、運営の透明性が求められる
- 解散・清算が複雑 ― 解散時には残余財産を国・地方公共団体・他の社会福祉法人等に帰属させる義務がある(法第47条)
どの法人格を選ぶべきか?
障害福祉の現場で多いのは以下のパターンです。
- 第一種社会福祉事業(障害者支援施設)を運営したい → 社会福祉法人のみ
- グループホームや就労継続支援B型を始めたい・小規模から試したい → 株式会社やNPO法人でも指定を取得して運営可能。将来的に第一種を視野に入れるなら社会福祉法人への変更も検討可能
- 既存の社会福祉法人が事業拡大したい → 定款変更・所轄庁協議を経て新たな事業を追加
法人格の選択は長期的な経営戦略に直結します。「何をやりたいか」「どこまで規模を拡大したいか」を整理した上で判断することをおすすめします。
社会福祉法人の設立・認可手続きについては、別記事で詳しく解説する予定です。ご質問やご相談はお気軽にどうぞ!
行政書士 高橋一樹(東京都小平市)
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