この記事ではは、障害福祉サービス事業所の運営主体として、社会福祉法人を設立したいという方向けに、手続きの概要を解説します。
社会福祉法人設立の最大の特徴は、設立するために所轄庁の「認可」が必要な点です。
株式会社なら登記するだけで成立しますが、社会福祉法人は審査を経て初めて設立できます。
そもそも社会福祉法人とはどんな法人か
社会福祉法人とは、社会福祉事業を行うことを目的として設立される非営利法人です。
社会福祉法人が行える事業は、社会福祉法第2条に定める「社会福祉事業」(第一種・第二種)です。たとえば、特別養護老人ホームや障害者支援施設(入所系サービス)は第一種社会福祉事業、居宅介護や就労継続支援は第二種社会福祉事業に該当します。
NPO法人や株式会社との違いについては、前回の記事「社会福祉法人とは?NPOや株式会社との違いをわかりやすく解説」でご説明していますので、あわせてご参照ください。
所轄庁はどこになるか
社会福祉法人の認可申請先は、法律上「所轄庁」と呼びます(社会福祉法第30条)。
所轄庁は原則として、法人の主たる事務所が所在する都道府県知事です。ただし、一定の要件を満たす場合(指定都市・中核市の場合等)は、その市長が所轄庁となることもあります。
手続きの詳細は都道府県によって異なるため、まず所轄庁のウェブサイトで最新の案内を確認することをお勧めします。
設立までの全体的な流れ(8ステップ)
ステップ1:設立目的・事業内容の検討
最初に、どのような社会福祉事業を行うかを具体的に決めます。事業の種類(第一種か第二種か)、対象となる利用者、施設の規模・所在地、運営体制などを整理します。この段階で「本当に社会福祉法人でなければならないか」も改めて確認することをお勧めします。
社会福祉法人は信頼性や補助金・税制上の優遇という強みがある反面、設立・運営の負担が大きいです。目指す事業がそうした負担に合致しているかを、この段階でしっかり見極めましょう。
ステップ2:所轄庁との事前相談
認可申請の前に、所轄庁との事前相談を行うことが強く推奨されています。事前相談では、事業計画の概要・施設の場所・財産の確保状況などを担当者に確認してもらいます。
厚生労働省の「社会福祉法人審査基準」に照らした予備的なチェックを受けられるため、後の本申請をスムーズに進めるためにも欠かせないステップです。所轄庁によって相談受付の方式・提出書類が異なるため、事前に問い合わせることが大切です。
ステップ3:財産の確保
社会福祉法人には、事業を安定的に運営するための基本財産(不動産または金融資産)が必要です。財産要件は、厚生労働省「社会福祉法人審査基準」に事業の種類・規模ごとに定められています。
たとえば、障害者支援施設を経営する場合には施設の土地・建物が基本財産として求められます。この財産の確保(土地・建物の手配や寄付の集約)が、設立において最も時間を要する関門のひとつです。
ステップ4:定款の作成と設立総会の開催
社会福祉法人の設立には、法人の基本的な規則である定款の作成が必要です。定款に記載すべき事項は社会福祉法第34条に定められており、目的・名称・事業の種類・事務所の所在地・役員の定数・資産に関する規定などが含まれます。
設立発起人が設立趣旨書を作成し、設立総会を開いて定款を承認します。社会福祉法人には評議員会の設置が義務付けられており(社会福祉法第45条の2)、設立時に評議員・理事・監事を選任する必要があります。理事のうち1名が代表理事(理事長)に就任します(社会福祉法第45条の13)。
ステップ5:認可申請書類の作成・提出
所轄庁に対して、以下のような書類を提出します
※「社会福祉法人審査基準」に基づく一般的な書類リストであり、所轄庁によって異なります。申請前に所轄庁の最新の「申請の手引き」を入手し、詳細は各所轄庁にご確認ください。
- 設立認可申請書
- 定款(案)
- 設立代表者・役員(理事・監事・評議員)の履歴書・誓約書
- 財産目録・収支予算書・事業計画書
- 土地・建物に関する書類(登記事項証明書、固定資産税評価証明書 等)
- 役員就任承諾書
ステップ6:所轄庁による審査・現地調査
提出書類をもとに、所轄庁が書類審査を行います。また、現地調査(施設の立地・設備の確認等)が行われることもあります。
書類の不備があれば、追加資料の提出を求められます。所轄庁によって審査期間は異なりますが、数ヶ月かかることも少なくありません。余裕を持ったスケジュール管理が重要です。
ステップ7:設立認可・法人設立登記
審査が完了し、認可の決定が下りたら、所轄庁から「設立認可書」が交付されます。
認可を受けた後、速やかに法務局で設立登記を行います。登記の完了をもって、社会福祉法人として正式に成立します。
ステップ8:事業者指定申請・運営開始
法人設立後、実際に障害福祉サービスや介護サービスを提供するためには、別途、都道府県等による事業者指定が必要です。
「事業者指定」の詳細については、「『指定』とは何か?事業所が指定を受ける意味をわかりやすく解説」をご参照ください。
社会福祉法人の設立認可と事業者指定は別々の手続きです。実務上は並行して準備を進めることが多く、スケジュールの調整が重要になります。

設立までに要する期間の目安
設立に要する期間は、事業内容・財産確保の状況・所轄庁の審査状況によって大きく異なりますが、一般的には準備開始から1〜2年程度かかることが多いとされています(所轄庁によって審査期間が異なります。各庁の担当部署にご確認ください)。
特に財産の確保(土地・建物の手配、寄付の集約)と所轄庁との事前相談に時間がかかることが多いため、早めの動き出しが必要です。
よくあるつまづきポイント:財産要件と役員要件
社会福祉法人の設立でつまずきやすいポイントが2つあります。
①財産要件:基本財産として求められる不動産・資金の確保が不十分なまま申請に進み、認可が下りないケースがあります。事前相談の段階で財産要件を所轄庁に確認することが大切です。
②役員の欠格要件:理事・監事・評議員には、禁錮以上の刑に処せられた者など、一定の欠格事由があります(社会福祉法第40条)。就任予定者が要件を満たしているかを事前にチェックしましょう。
まとめ
社会福祉法人の設立は、株式会社に比べて手続きが複雑で時間もかかります。しかし、社会福祉事業を長期的・安定的に担う法人格として、行政からの信頼性は高く、補助金や税制面での優遇も受けられます。
設立を検討されている方は、まず所轄庁への事前相談を行い、早めに専門家に相談されることをお勧めします。
当事務所では、社会福祉法人の設立認可申請のサポートも承っています。どうぞお気軽にお問い合わせください。
行政書士 高橋一樹(東京都小平市)
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